調教の見方(関西版)

「調教の読み取り方」

今回はFF流競馬の調教解析のやり方をご紹介。

私が馬券を買う時は、第1に調教を重視します。未勝利戦や1勝クラスくらいなら馬柱も見ず調教だけで判断します。穴馬を狙う際も調教は大きな要素となり、競馬新聞で一番美味しい情報が調教です。

 さて、私は中京・阪神・京都・小倉が主戦の競馬オジサンなので、基本的には関西(栗東TC)エリアの競馬しか見ませんし重賞以外は関東のレースは買いません。故に美浦TCの調教はそこまで知っている訳では無いので軽く触れる程度になります。ご了承下さい。

 #1調教の要素

調教とは競走馬を実際にトレーニングコースに走らせて、能力の向上や実力のレベルを測るものです。

新聞に掲載される調教だと距離は1200・800m~ラスト200mまでのラップタイム、コースはウッドチップ・ダート・芝・PT(ポリトラック)・障害などがあります。多く使われるのがウッドチップと坂路です。レース前の1週前・最終追い切りはほとんどこの2つのコースで行われます。

これらのコースで競走馬は追い切られ、走破タイムを測り力を付けます。調教で測ったタイムを調教時計と言います。

#2 追い切りの解析

競走馬はレースを使われると放牧に出されるか在厩で引き続き調整されるかになります。この辺りは調教師の手腕によりますが、牧場で仕上げた馬はトレセンで強い調教はしない傾向にあります。特にエサやり師の場合は10日前入厩のルールのため2週前くらいにトレセンへ戻してから、軽く乗るくらいで終わるので調教時計はまったくあてになりません。牧場が仕上げた状態を崩せないので、馬に負荷をかけないのです。

自分の意思で調教を付けている調教師の場合は、レースの1ヶ月前後にトレセンに戻し、じっくりと乗り込んでいきます。

エサやり師以外の調教師は1週前または当週(水曜日)の追い切りで強めの調教により負荷をかけます。1週前に強くするか当週かは調教師のやり方によりますが、これらは競馬新聞の調教欄を見て「強め」「一杯」などの記載を見つければ判断できます。

調教で鞍上(乗り役)が強く促すと調教時計は速くなり、また他の馬と一緒に走らせる併せ馬を行った際も馬の闘争意識が促され速い時計が出ます。

競馬新聞によりけりですが、促しが軽い順に「馬也」→馬が自分で行くままの状態、「仕掛」→乗り役が手網を使って押している状態、「強め」→乗り役がムチや手網を使って押している状態、「一杯」→乗り役がムチや手網を盛んに使って激しく追っている状態。この乗り役が促せば促すほど馬は合図を受けて走り出し、時計は速くなります。

鞍上が特に促さない「馬也」では馬が気楽に走るので、ここで出た時計はそれほど参考になりません。併せ馬を行った場合は馬也でも馬同士張り合っているのでそれなりに時計が出るため、この時計は状態判断に役に立ちます。最低でも「仕掛」状態での時計を判断に使いたい所です。逆に馬也状態で恐ろしいタイムが出た場合、促した時にこれより速いタイムが出るという事なので、この際は基準時計と比較しましょう。

その他に重要な点は、追い切りの騎乗者です。レースには多くの馬が出走するため、必ずしもレースでその馬に乗る騎手が追い切りを行うとは限りません。騎手がいない場合は、他の空いている騎手や厩舎の助手(攻め馬担当)が乗ることになります。騎手は体重制限があるため48キロ前後の体重で乗りますが、厩舎の担当・助手さんはアスリート程度の体格になります。助手さんの体重は公表されていないので分かりませんが、55~60キロくらいと見込めば良いでしょう。そのため、体重の軽い騎手が乗ると馬への負担が減り時計も速くなりますが、助手さんが乗ると負荷は増え時計も遅くなります。調教を見る際は競馬新聞に誰が乗っているか書いてあるので、それも考慮する必要があります。

 最近の競馬予想サイトでは追い切り映像を見ることができますが、これはそれ程参考になりません。映像の視聴に対してかかる時間がメリットを下回るためです。フォームが悪いと当然時計も出ないし、レースでの戦績に紐づきません。そもそもフォームの善し悪しは一朝一夕で変わるものでは無いし、馬の癖なので今後大きな変化が出ることはありません。フォームは度外視で時計が一番の判断要素になります。

 

#3 馬券に対する調教の買い方

追い切りで時計が出るのは一番長くて1200m。ただ実際の競馬では多種多様なレースがあり、日本ダービーなら芝の2400m、菊花賞なら芝3000mとそれぞれ異なります。これらのレースでは単なる脚の速さだけでなくスタミナも必要となります。つまり、調教で速ければ単純に買えるというものではないのです。

逆に言うと、短距離戦は調教が良ければ買いではないでしょうか。実際、短距離重賞に出る馬は調教時計がかなり速く出ているので、その違いは一目瞭然です。

また、走破タイムが速くはないものの1F(200m)ごとのラップタイムが等間隔の場合は飛ばしすぎず遅すぎず、スタミナがあり安定した走りだと言えます。テン(最初)の1Fが速いが後半が極端に遅い場合、掛かっているかスタミナ切れが考えられます。中長距離戦の場合、このラップタイムが安定した馬を買いたい要素になります。

 

#4 時計の見方

栗東TCには多種多様なコースがあります。

人気なのがCW(Cコース・ウッドチップ)と坂路。ほとんどこれらで追い切りされます。

CWは走破時計の6Fが80秒台ならかなり速く、ラスト1Fが11秒前半なら合格、10秒後半なら文句なしです。

栗東の坂路はほぼ直線で高低差が32mあります。走破時計の4Fが51秒なら良し、50秒なら合格、49秒なら文句なしです。

ラスト1Fが12秒前半なら合格、11秒なら文句なしです。

坂路は文字通り坂道なため、スタミナやパワーが要求され、非力な馬ではラストで力尽き13秒台の時計になってしまいます。

登板した時計が良くても終いで悪い場合は割引となります。

また坂路は脚元に与える悪影響が少なくしっかり負荷がかけられるので人気があり、1日1000頭が使うほどに忙しいコースになります。そのため馬場が掘れて荒れるように見えますが、こちらもウッドチップなので芝程の悪影響はありません。そこまで考慮する必要は無いでしょう。

 

美浦TCは昔から西高東低と言われる通り、調教施設の質が悪く馬も結果が出ない事で有名です。

美浦の坂路は高低差が18mと栗東より低くなっており、コースも場内に沿っているためカーブを描き、時計が出にくくなっています。(23年6月現在、美浦坂路は改装工事中で使用中止、直線のコースになります)

そのため、時計もラスト1Fが12秒後半でも悪くはありません。

美浦は南と北にそれぞれ調教場があり、追い切りに使われるのは南W(南調教場・ウッドチップ)になります。

こちらは栗東のCWとそれ程変わらないので、時計の感覚もそこまで変える必要はありません。

 

栗東美浦各施設にある障害コースは競走馬が障害レースに出るため行われる障害試験や、障害馬の飛越練習の為に使われます。新聞での表記は栗飛・障芝などです。

実際に障害馬がレースに出る際、都度このコースで追い切りするとは限らず、坂路やウッドチップで調整されることが多いです。

ただ、障害未勝利戦の初障害の馬はこの障害コースを障害能力試験で必ず使っており、ここでの時計が良ければ勝てる可能性が高いと考えられます。初障害でも勝てそうな穴馬を見つけるには、この障害試験やその後の障害練習の時計を見るようにしましょう。

時計的には終いで12.5を切っていれば良し、それより遅いと割引です。障害戦は長距離でスタミナが要求されますが、それ以上に飛越のセンスが必要なので、上手くジャンプできていればCW程ではありませんが時計が出るようになっています。

 

他にはポリトラックコースがあります。ポリトラックとはプラスチックの端材を馬場に敷き詰めワックス等の油分で撥水しやすくした物です。雨天に強く馬場が悪くなりにくいのが特徴です。時計は芝と変わらないくらい出るスピードタイプで、終い平均11秒前半くらいは出ます。現在はそこまで使われることはありません。

ダートと芝もありますが、こちらもほとんど使われないので意識しなくても問題ないでしょう。

 

#5 調教は時計が命

調教は競走馬の実力を判別する1番の材料です。実際に走らせ、スピードを見る。これ程までに参考になる情報はありません。

稀に調教で動かず実戦でしか走らない馬もいますが、ほとんどは調教の動きが実戦に紐づきます。

調教は時計を見て、実戦のコースや状態を見て判断するようにしましょう。